主翼一次構造

主桁

B.Bでは主桁はCFRPパイプを使っています。パイプ径は根本から翼端に向かって細くテーパーしており、主翼にかかる荷重(曲げ・捻り・剪断)はこの主桁とワイヤーで受け持つ設計になっており、一般の航空機によく使われている応力外皮構造ではありません。

CFRPパイプの特徴は軽くて強いことですが、線維方向によって特性が大きく変わるなので設計では金属とは違った配慮が必要になってきます。

CFRPパイプの構造は層構造になっており、プリプレグと呼ばれるエポキシ樹脂をしみ込ませた一方向の薄いカーボン線維を重ねていくことで作られます。このプリプレグを積層させる角度と何層にするかでCFRPパイプの特性は決まります。

パイプの肉厚は1mm以下ですが、この厚みの中でどの方向に何層入れるかが桁の設計では重要になってきます。プリプレグの厚みの制約があるのであまり自由度は高く設計できませんが、強度・剛性と重量の兼ね合いを考えて決めていきます。

B.Bの場合、主桁のCFRPパイプではプリプレグを0度、90度、40度の方向に巻いてあります(主桁と平行方向が0度)。
この場合0度の層は主に曲げを、40度の層は捻りを受け持ちます。90度の層は理論的にはなくても良いのですが、これがないと取り扱いにくい(線維に沿ってクラックが入りやすくなってしまう)ので1層のみ入っています。

勘の良い人は捻りは45度の方がよいのでは?と思うかもしれませんね。捻りに対してはそれで正解なのですが、40度にすることで捻り剛性はほぼ落とさずに曲げ剛性の向上にも寄与できるという話が海外の論文(airglowだったかな?)に書いてあり、それをパクっています。本当かどうかは検証していませんのでスキルがある人は検証してみてください(笑)

UD補強したパイプ断面また、0度の上下方向には特に大きな曲げモーメントがかかります。ですので、この部分だけ多めにプリプレグを貼り補強するという方法もあります(右図)

この方を使うことで軽量化・剛性アップが可能ですがB.Bの時はそこまでの技術力がなかったのでやっていません。今ではパイプメーカーに言えばこの加工をやってくれるそうですし、プリプレグを用意すれば自分たちでも可能だと思います。もしワイヤー無しの機体を作る場合は必須になってきます。

それから使用するプリプレグは高強度タイプと高弾性タイプがありますが、主桁には高弾性タイプを使用しています。

実は高弾性タイプのCFRPの方が値段が高いです。しかし翼の構造設計においては強度よりもむしろ剛性の方が重要になってくるのでここは譲れません。

実際、強度だけでCFRPを設計するとフニャフニャの機体になてしまいます。剛性の低い翼は変形が大きいので空力的に良くないのはモチロン、操縦性・安定性もよくありません。特に風を選べない鳥人間コンテストではいかに「軽くて硬い翼」にできるかが重要です。

なお、B.Bのパイプは信頼性や技術力の関係から自作ではなくメーカーに製造してもらっていました。

ワイヤー

翼幅の大きな体ではCFRPパイプの主桁だけで翼に働く曲げモーメントを支えようとすると、非常に重く太い桁が必要になります。BBでは軽量化のためにステンレスワイヤーを張って曲げモーメントを分散させる構造を採用しています。

この構造は軽量で頑丈な構造になる代わりに空気抵抗が増えるというデメリットがあります。ですので機体の飛行速度と重量のトレードオフでワイヤーの有無は決めることになります。とはいえ、信頼性や扱いやすさ、コストを考えると最初はワイヤー構造をオススメします。

ちなみに上のワイヤーをランディングワイヤー(飛行張線)、下側のワイヤーをフライングワイヤー(着陸張線)と呼んでいます。

ワイヤーのレイアウト

フライングワイヤーは飛行中に翼の根本に働く大きな曲げモーメントを支えてくれます。実は上半角の大きさもこのワイヤーの長さで調節できるのでセッティングの幅が広がります(ワイヤー無し構造の場合は上反角の調整が大変です)

また、このフライングワイヤーは機体のアキレス腱ともよべるところで、これが切れると主翼は一瞬で折れてしまいます。ですのでワイヤー端のかしめ部分は十分信頼性のあるものを使いましょう。

それから、必ずといっていいほどこのワイヤーに躓く人が出ます。これは注意していてもとっさの時に忘れてしまうんですね。

「組み上がった機体の翼の下はくぐらない」

というルールをメンバーはしっかり頭に入れておく必要があります。

ランディングワイヤーは着陸時の衝撃から翼を守ったり、地上に待機中に翼端が地面に着くのを防ぐ役割を果たしています。ランディングワイヤーは飛行中は空気抵抗になるだけなのですが、テストフライトの時の取り扱いなどを考えると無しで運用するのはなかなか大変です。主翼幅がそれほど大きくない機体の場合は無くてもなんとかなります。

ちなみに上の図ではランディングワイヤーの方がフライングワイヤーよりも内側に取り付けられていますが、これは少しでも長さを短くして空気抵抗を減らすためです。

ワイヤー固定部

ワイヤーマウント

各ワイヤーは上図のようなケブラーを用いたマウントと小さなシャックルで桁とつながれています。このマウントはケブラーで編んだひもを三つ編みにしたものの一方にシンブルをつけ、もう一方の端をほどいて広げそれをCFRPパイプに貼り付けその上からケブラーでぐるぐる巻きにしたものです。接着は瞬間接着剤で行っていました。最近はエポキシかもしれませんね。

でも瞬間接着剤固定でも今まで切れたことはありません。軽量かつかなり丈夫です。

キングポスト

キングポストの構造

フライングワイヤーは胴体のコックピットフレームとつなぐ事ができますが、ランディングワイヤーはつなぐところがありません。この為、主翼中央上部にキングポストと呼ばれる棒を立て、そこにランディングワイヤーをつないでいます。

B.Bの場合は CFRP パイプ製で、空気抵抗を少しでも抑えるために翼型の覆いを付けています。構造は下図のようになっており、リブはスタイロフォームで、前縁は1.5mmバルサで覆い、表面はフィルム張りです。主翼との接合は単純な差し込みで、主翼の主桁の上部にマウントがあります。

リアスパー

飛行中の翼には空気抵抗や空力中心と風圧中心のズレから前後に曲げる力や捻れる力も働きます。この捻れと前後方向の変形に対する考慮を忘れると、プラットフォームから飛び出した時に翼がねじ切れたり、剛性が低く操縦性の悪い機体になります。

このように重要になってくる捻れと前後方向の変形を抑えるための構造がリアスパーです。

B.Bでは翼根本から7mあたりまでCFRPパイプのリアスパーが入り、ケブラー繊維をX字型に張って軽量なトラス構造を形成しています。

他にも色々方法はあると思いますが、この構造だとリアスパーのマウントを利用して主翼の取り付け迎角を簡単に調整できるメリットもありずっとこの方法を採用しています。

リアスパーの構造